蜻蛉 ~トンボ~

8月28日(日)

お盆も一段落し、再び暑さがぶり返してきた。

暑さは戻ったが、セミの声は少しだけ。
それでも、ミンミンゼミの声が聞こえてくる。
長浜には、昔からアブラゼミ・クマゼミ・ツクツクボウシ・ニイニイゼミが見られるが、ミンミンゼミは聞くことがなかったのに・・・。

池によく飛んできていたシオカラトンボも見かけなくなってきたが、今朝はカワトンボの仲間、ハグロトンボが飛んできて、長い間とまっていた。

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トンボ

トンボを漢字で表すと「蜻蛉」。
『蜻蛉日記(かげろうにっき)』で知られるように、「カゲロウ」も「蜻蛉」と表記される。

日本語のトンボの語源は定かではないが、稲穂が飛んでいるように見えるから、「飛ぶ穂(とぶほ)」が訛ってトンボとなったともいわれている。

日本では古来トンボを「秋津(あきつ)」とも呼んでいたそうで、日本のことを「秋津洲(あきつしま)」と表すこともあったとか。

これは、神武天皇が大和国(現在の奈良県)の丘に登り、その国土を一望して、

あきつのとなめのごときにあるかな (『日本書紀』)

といわれたことに由来するそう。

「あきつ」とはトンボ。「となめ(臀呫)」とはトンボが交尾をしているときに見せる、お互いのしっぽをくわえて飛んでいる姿を現しているのだと。

狭い国だがすばらしい国。まるで、トンボ(秋津)がとなめ(臀呫)しているようだと褒め称えたから「秋津洲(あきつしま)」と呼ばれるようになったとか。

それくらいトンボは昔から馴染みのある虫であったようだ。

西洋でトンボは不吉な虫と見られていたようだが、日本では勝ち虫と呼ばれ、武士の間で喜ばれたそう。

それは、トンボは前にしか飛ばず、後ろには進まない。それが「不退転(ふたいてん)」を表すからだと。

「不退転」

これはもともと仏教用語。

浄土真宗では、信心を得たものは不退転の位に住すといわれる。

真実信心うるひとは
 すなわち定聚のかずにいる
 不退のくらゐにいりぬれば
 かならず滅度にいたらしむ (浄土和讃)

それがいつの頃からか「不退転の決意で取り組んでいく」とか、いろんな使われ方をされるようになってしまった。
「他力本願」もそうだが、誤った用い方はいろんなところでされてしまっている。そのことばがそのように使われるようになった意味を問うてみることも大切かと。